私たちは、この夏、3度目のインド・スタディーツアーに出かけました。
今回のスタディツアーの目的は、児童労働について学ぶことと、
私たちの活動の目的である学校建設の進捗具合を確めることでした。
これまで私たちは、アンドラプラデシュ州プナビリ村、カルナータカ州バンガロール市の2カ所に学校を建てる計画を進めていました。
そこで、今回はアンドラプラデシュ州とカルナータカ州の2組に分かれて出発することにしました。
今回の旅では、貴重な学びの場を得ることができましたが、同時に現実の厳しさも学ぶことにもなりました。
それでは、旅のレポートをご覧ください。
なお、詳しい報告書として
『2004年夏インドスタディーツアー報告書』(300円※送料別)
を現在作成中です。
ご希望の方は、ftcj_school@yahoo.co.jp までご連絡ください。
■インドの教育システム■
インドの教育制度は各州によって多少の違いがあります。しかし、家庭の経済事情によって教育を全く受けることができない子どもや、学校を辞めてしまう子どもが多いのは、全国共通の問題です。初等教育さえも充分に普及していないのです。そのことが、子どもの成長もしくは将来に大きな影響を及ぼすと考えます。ゆえに、子どもにも大人にも教育の重要性を認識してもらうことが必要なのです。また、貧しい家庭の子どもも学校に通いやすい環境を整えることも重要でしょう。そのような取り組みの一環として、制服・教材を無料で配布したり、給食プログラムに力を入れている州政府もあります。私たちが訪れたカルナータカ州はその一つでした。
教育の現場である学校そのものを知るため、そこに通う子どもたちの生の声を聞くため、私たちは合計5つの学校を訪問しました。バンガロール市郊外にあるボーンフリースクールという公立学校では、児童の自主性を重んじ、楽しみながら学べるような工夫が凝らされていました。生徒全員が集まり、新聞の読み合わせを行う時間を毎朝とっているのも、この学校の画期的なプログラムです。また、バンガロールの裕福な家庭の子が集まるエリート校では、常に英語で授業が進められ、非常に整った設備の中で勉強している子どもたちの様子を目の当たりにしました。このような学校から、インドの官僚や優秀なエンジニアなどが生まれるのだと確信しました。その他にも、中流階級の子どもたちが通う小さな私立学校、現地のNGOが建てた学校などを訪問し、インドの多様な教育事情を垣間見ることができたのは大きな成果です。
■インドのNGO■
また、私たちは現地のNGOをいくつか訪れました。
Centre for Cmmunication and Development(CCD)はリーダー育成をはじめとする様々な活動を行っています。彼らの活動によって、児童労働に対する意識が高まり、インド社会にこの問題に関する気づきがもたらされつつあるようです。
また、現地で成功している他のNGOを訪問して、活動をするにあたり彼らがニーズ調査を大切にしていることに気づきました。債務奴隷や、家庭のために働く子どもたちは、学校へ行けるように活動することが必要ですが、ストリート・チルドレンにはまず住む場所を確保しなければなりません。こういった子どもの状況をきちんと調査し、ターゲットを絞ることが彼らの成功の秘訣なのではないのでしょうか。
■カースト制■
インドにはかつてカースト制度がありました。カースト制度の下では、生まれた瞬間からその人の運命は決まってしまいます。カースト制度は法律によって廃止されましたが、人々の間には未だにその差別意識が残っているのです。それは農村部で特に著しく、アウトカースト(ダリット)の人々は様々な所で今も虐げられ続けているといわれています。そして、それは罪のない子どもたちにも大きな影響を与えているのです。実際に、ダリット出身であるということだけのために、小さな頃から他人の家で家事労働者として働かされ続けていた子にも出会いました。このように、人々の心の中に刻まれた差別意識をどのようになくすかが残された課題です。
■学校建設事業■
今回のスタディーツアーの最大の目的は、私たちの活動の根幹を成す学校建設事業を前進させることでした。上にも記したとおり、アンドラプラディシュ州プナビリ村、カルナータカ州バンガロール市の2ヶ所での事業を目指していました。
まずは、アンドラプラディシュ学校建設事業について報告します。活動目的は、「地域社会との密接な協力及び地域住民の参加により小学校を建設し、子どもの基礎教育の推進と子どもを中心とした社会の改善すること」です。教育の普及によって児童労働の現状を改善させるとともに、村の生活水準の向上も目指しています。
今回、すでに学校の建設が始まっているという連絡を受けた上で出発しましたが、現実には建設予定の土地が都合により使用できなくなっていました。代わりの土地があるということで、今回はその土地の整地作業を村人とともに行いました。また、二度とこのようなことがないように要請し、新たに書面による契約を交わしました。今後も連絡を密に取り合って、現地に働きかけをしていく必要があると思います。
次に、バンガロールの学校建設事業についてです。この計画は、昨年のスタディーツアーで出会った芸術家ジョン・デバラジを中心としたグループとともに進めてきたもので、芸術を通してストリート・チルドレンや働く子どもたちの自立を促すアートセンターの建設を目指すものでした。そのアイディアに共感して事業を立ち上げましたが、今年の春ごろから意見の相違が見られ、訪問直前には当初のものとはかけ離れた概要書が届きました。今回はその点について直接交渉を行い、今後の方針を判断することにしました。
話し合いの結果、残念ながら事業の継続を断念することになりました。その要因のひとつは彼らがパートナーとしての信頼性に欠けると判断せざるをえなかったこと。そして、学校建設事業に関する両者の理念がかけ離れていることでした。私たちは、様々な事情により学校に通えないでいる子どもたちを受け入れ、未来を切り拓く助けとなる学校を目指していました。しかし、彼らは、才能のある子どもたちを集め、芸術を通して児童労働問題に取り組むプロのアーティストを育成する学校の建設を主張しました。活動理念が根本的に異なるため、協力関係をこれ以上継続すべきではないと判断したのです。
■スタディーツアーを終えて■
多くの新メンバーと共に臨んだ今回のスタディーツアーは、現地の状況について今まで以上に理解を深めることができ、これまでにもまして有意義な学習の場となりました。これをステップにこれからもより多くのことを学び、それを社会に発信していきたいと考えています。
また、最後に述べた現地の団体とのやりとりを通じて、海外のパートナーと共に事業を進める上で必要となることを数多く認識しました。具体的には、学校建設の意義・目的やFTCJが目指す学校像の再確認、そしてパートナー契約のガイドラインの整備など、基礎的なことを固めていく必要性を感じています。そして、今回の経験を、現在進行中の事業に生かすと同時に、新たな事業の開始についても模索していきたいと思っています。バンガロール滞在の最後にジェノトサヴァという団体のメンバーと再会し、今後、協働の可能性を探っていくことになりました。